母の取り乱す姿に僕は驚いた

なにか…ある

そしてまだこんなに傷ついたままで

ずっと圧し殺していたのだろうか…

「母さん…」

「ごめんね…こんな…あなたの方が

辛いのに…ごめんね…私が…私が

バカだったばっかりに…」

「どう…したの?」

母は僕を見た

その目はいつになく切迫していて

怖いくらいだった

「お願い…正直に答えて…私は

ずっと不安で不安でしょうがないの

不安で夜中に目が覚めるのよ

あなたはさっき…先が見えないって

言ったけど…もっと他に理由が

あるんでしょ?…私はお兄ちゃんと

あなたが心配で心配で仕方ない

心配は…不安は今に始まったこと

じゃないの…もっとずっと前から」

母は少し錯乱しかけていた

「ああ…!わかって…いるんでしょ

あなた…にも…きっと…」

僕はそれを聞いて一瞬凍りついた

母は…なにか…あの秘密を

知って…る…?

母は…何を…知ってる?

もしや…兄とあの人の関係を?

それ以上…に?

もしかすると…僕た…ち

「…母…さん」

僕はその時感じた

今を逃してこの先そのことを

聞くすべがないと

今しかない

聞かなければならないことがある

きっと…母は…知ってる