翌日

学校から帰った僕に

母が兄が帰ってきたと告げた

僕は母の話も終わらないうちに

たまらずに二階の僕達の部屋に

ダッシュで上がって行った



兄は部屋に居なかった

僕は母に兄がどこにいるか聞いた

「話を途中までしか聞かないから」

母は呆れたように話を続けた

「向こうよ…あっちのアパート」

僕が学校に行っている間に

「お兄ちゃんあんたに…」

あの部屋に戻って行ったと

「…ってことで…聞いてるの?」

母の言葉が耳に入らない

「聞いてるの?お兄ちゃんしばらく

独りにしといてって…伝言」

取り繕うにも言葉が出ない

「あんたもいい加減お兄ちゃん離れ

しなさい!…それと…勉強!」

母の追撃を全く無視して

一言の反論も口にせずに

僕は幽霊のような足取りで

自分の部屋へと戻った

パタンとドアの閉まる音と共に

僕の心もなにかを遮断したような

そんな感覚にが生まれた




決められちゃったんだ

兄貴に

決心されちゃった

もう反論の余地無しなんだ

こんなのって

こんなのって

あるかよ…!

悲しいを通り越し

捌け口のない怒りが

胸の奥からこみあげてきた

泣くのは

泣くのは

もう厭きたんだ

もう泣くのは

あんなに泣いて泣いて泣いて

懇願して

すがって

血を流しても

それでも行くのか

僕から離れて

また去るのか





僕はその時自分を見失っていた

取り乱してたと言ってもいい

僕はカバンの中から

あの手紙を取り出した