「北海道へは旅行ですか?」「旅行、取材旅行」「雑誌のね、旅行雑誌の編集者なんだ」「へえ」

「お宅は?」「私は帰省です」

雪野の実家は北海道だった

北海道の女あらしく、肌はつややかで色がすごく白かった

岬25歳の冬だった

「良かったら案内してもらえませんか?」「いいですよ」「おいしいレストランとか景色とかいいところがあったら」「いいですとも」

そういうと二人は食堂車のほうへと歩いた

食堂車ではもう朝ごはんの用意がしてあった

二人は申し合わせたように食堂車にある席に腰をかけた

窓から見える景色は相変わらずの雪景色だった

「冬は好きですか?」「あまり好きじゃないかも」「夏のほうが好きかな」

「ああ、名前をまだ聞いてなかったね」「雪野です、松下雪野」「僕は刈谷岬」


おもむろに岬は胸ポケットから名刺を取り出した