「私が母のお腹の中にいた時は、父も嬉しそうだったみたいですが……実際、私が生まれると、母が私にずっと掛かりっ切りになって、父は母との時間を奪う私の事を、段々に疎ましく思うようになったみたいです」



2才の記憶なんて幼過ぎて、もちろん無い。

実の両親が亡くなった時、私が『本当の事が知りたい』と言って、お父さんと祖父母から強引に聞き出した事実。



「ある時、寝ている私の顔に濡れタオルを当てている父を見て、母が慌てて問い詰めると、『顔が汚れていたから拭いてただけ』と言われたらしいんですが……母は『このまま一緒に居たら、風花は殺されるかもしれない』と感じて、とにかく家を出ようと決心したそうです」



出来るだけ客観的に話すようにした。

そうじゃないと、今はもう痛くない筈の背中の『跡』が疼く気がするから……。



「母は実の父と結婚する時、両親への挨拶に行った時点で反対されて……それを押し切って結婚した為、勘当されていたらしく、幼なじみを頼ったんだそうです……それが、後に私が『お父さん』だと思う、今日会ったあの方です」



そう……物心(ものごころ)がついた時には、お父さんとお母さんがいつも傍に居て、いつも笑顔で私を見守ってくれていた。