女神は人々を治め、これを利するようはからうと、森へ入りました。


 そこには神秘に満ちた泉がありました。


 彼女は身に負った傷から血を浸すと、その水によって、闘いに傷ついた人々を癒して回りました。


 兵士達は手厚い看護を受けましたが、あの少年の姿はありませんでした。


 風の吹く大樹のもと。


 彼は女神の胸の中で自分の死期を感じ取り、それでも微笑み、苦しい息をつきました。


 女神は果断な覚悟をなさいました。


 彼に神の息吹を与え、ご自分は人として命を絶ち、御自らの血と名と涙とにかけて地上の覇権をあけわたしたのです。


 そうです……二度と、愛(かれ)を失わないために。


 人々は男神の庇護の元、生き延びました。


 そして女神に感謝しました。