あの天真爛漫な人間の代表者とも
いえるべき真唯が

今までに見たことのないような
歪んだ顔で、
笑った。

「だから、
 私が生き返るために、」

咲柚は恐怖に飲まれた顔で
真唯を見つめる。

「私の生贄になってよ?」

慶悟も同様だ。

「早く逃げろ!!」

反射的に叫ぶ。

恐怖ゆえの叫び。

慶悟は悔しそうにうなずいた。
咲柚は動けずにいた。

だから、
慶悟に引っ張ってもらった。

俺?

俺は囮になって、
少しでも時間を稼ぐ。

でも、

「あはっ。
 貴方は追いかけないよぉ?」

口元をこれでもかと
いうぐらいに釣り上げ、笑う。