この声が枯れるまで


『ねぇ?』


『何?』


『あなた…いつも悲しい瞳しているね?初めて会ったその時から…』


『そうかな?この世界を恨んでいるからかな?』


僕は小さく笑い、街を眺めた。
この場所は何回来ても飽きないな、と街を見て思う。


『何故?何故恨むの?』

『きっと聞いたら幻滅するよ?』


『幻滅…?じゃあ聞かない!』



『何だよそれ…』


彼女が笑う度に、辛いモノが、すーっと抜けていく気がした。
彼女の笑顔は、
僕を癒してくれる──…
そんな気がしたんだ。



百合がもし今の僕を見たら…きっと悲しむよね?

でも百合?
僕は恋をしてはいけないのかな?


もう…そろそろいいかな?

やっぱり体は正直で、
毎日彼女の笑顔を見たい為に、ここに来てしまうんだ。



『ほら!また悲しい瞳した!少しは楽になった方がいいよ!』



『そうかもね?でも無理かな…』



『何でぇ?無理じゃないよ!ただ、楽しい事や嬉しい事を考えればいいんだからさ!』



『さんきゅ。やってみるよ』



『うん!ねぇ、私ここで働いてるから、いつでも来てよ!』


僕に彼女は、一枚の名刺を渡してきた。