この声が枯れるまで


萩原笑との出会いで、
僕の中の太陽がまた道を照らした。

彼女との出会いで、
僕の何かが動き出した。

家に帰る僕。
僕はまだ百合への気持ちがなくなった訳ではなかった。


百合が僕の中にまだ残っていた。

でも何故だろう?

もう一度、彼女に会いたいと思う僕がいた。

彼女の笑顔をもう一度見たいと思った。



『…百合…俺どうしたらいい?』



僕の中にいる百合に問いかけても、返事はない。
ただ虚しく、薬指のペアリングが光るだけだった。



…時が経つ。

萩原笑と出会って一週間が経った。


僕は萩原笑と出会った時刻に毎日毎日、この秘密の場所へと来ているが、彼女は現れなかった。


もう…だめか…と心の中で諦めかけていた時…



『久しぶり、鈴木優さん?』


後ろから僕を呼ぶ声がした。



『あっ…』


そこには萩原笑が立っていた。



『この場所好きなの?』

『うん…何か落ち着くんだ…』


『私も!』


彼女は満面の笑みで僕の隣に座る。
僕の鼓動がほんの少しだけ動いた事…
僕だけの秘密にした。