この声が枯れるまで


────…


『何で泣いているの?』

あの秘密の場所で、
僕は君と出会った。

君はただ、泣いている僕を不思議そうに見ていた。
僕は君の瞳に吸い込まれていく。



『…景色が変わらないからかな?』


とっさに出た言葉。


また彼女を不思議にさせてしまったようだ。



『景色は…いつも変わらないよ。何年経っても…』



『そうかもね…』



『変な人…』



『ねぇ…運命って信じる?』


僕は誰かも分からない、見知らぬ人に質問をした。


『運命?どうかな?
信じるか信じないかって言われたら…信じないかな…』



『そっか…俺もあまり信じないんだ…』



『ホント変な人ね、あなた…名前は?』



『俺?…俺は、鈴木優』



『鈴木優…どっかで聞いた事ある名前…でも思い出せないや。
私は、萩原笑《はぎわらえみ》』




『萩原笑…』



『おかしい?』



『綺麗な名前だね?』



『ありがとう…あっやばい!もうこんな時間じゃん!また会えるといいね、鈴木優さん。じゃあね』


彼女、萩原笑は、風のように速く去って行った。


秘密の場所に残された僕。


これも運命なのだろうか─…?