感情の昂りから、あたしは思わず立ち上がっていた。
「大丈夫ですわ、春姫さん。胡桃坂さんなんて放っておきましょう」
「ええ、華苗さんの言う通りですわ。春姫さん、次は移動教室です。行きましょう?」
華苗と繭はあたしに向かって柔らかい笑みを浮かべて、強めの口調でそう言った。
周りの女子たちは、突然の展開に驚き口に手を当てていた。
…こんな時でも気品を忘れないのは、さすが本物のお嬢様だと思う。
「な、なんですって!?わ…わたくしに向かってなんと無礼な!」
胡桃坂さんがキャンキャンと喚く中、華苗と繭は至って平然と次の授業の準備をしていた。
あまりの無視っぷりに、あたしの方がおろおろしてしまう。
「どちらが無礼でしょう?」
「ふふ、皆さんはいかが?」
あたしの腕を優しく引いた2人に連れられて、教室を後にした。
……華苗と繭って、こんなに頼もしかったっけ…?
『あの…か、華苗さん……繭さん…!』
慌てて呼び止めると、2人は揃って振り向いた。

