「シンヤ」

「ミナト、遅かったね。」

「…こんなもんだろ。」

「…ご紹介します。
私の敏腕助手、ミナトです。」

「ど、どうも…朝田博信(あさだひろのぶ)です」

「はじめまして。ミナトです」

そう言って微笑む男の名は、桂木湊太(かつらぎそうた)
通称、探偵助手ミナト

髪は男にしては長めであり、身長は170cmは優に越えているであろう。
一切着崩さずにブレザーを羽織り、黒い縁の眼鏡をくい、と持ち上げるその姿はさながら――生徒会長、そんな様子だ。

真也とは正反対の様子の湊太に、男は困惑しながらも三日前からのことを話し出した。
ひとつひとつ、苦しむように。男にとって、たった一匹の家族であったペットが、居なくなった三日前のことを。









「ただいま―――お腹空いたかい、レオ。
あれ、…レオ?」

男は、部屋を見渡す。そこに、愛犬の姿はない。
それどころか――窓が、空いているのだ。

「レオっ…!?」

男は、慌てて窓の外へ身を乗り出す。
其処には犬の足跡と、レオにはめてあった首輪がただ残っていた。

――男は慌てて部屋を飛び出す。
愛犬の名を叫びながら、一晩中。





―――――しかし、その愛犬、「レオ」が見付かることはなかった。










「…、成る程。それから三日間、レオ君は帰ってないんですね?」

「…はい」

「どう思う、ミナト」

「んー…嗚呼、足跡と首輪を見せて戴いて宜しいですか?」

「ああ、はい…うちに、来ますか?」

「どうする、シンヤ」

「行こうか。見ないことには始まらないから」

「行かせて戴きます」

「…どうぞ」

がた、と椅子を鳴らせて男は立ち上がる。
レジで精算を終えると、三人は男を先頭に歩き出した。

階段を下り、横断歩道を渡り、ものの10分で辿り着いたのは大きな高級マンションであった。