扇風機がまわっている。


京介の伸びっぱなしの長い髪は傷を隠すためなのだろうか。


その髪をなでるようにまわる扇風機の動きに、僕が苛立ちを覚えているのは言うまでもなかった。


「何なんだ、お前は」
 

僕がそう叫ぶと、やっと京介はこちらを見た。


僕には危機感があった。


僕とふみが逃げ回ってまで隠している秘密を京介は知っているのじゃないだろうか。


それでいて、ふみを連れて行ってしまう気なのではないだろうか。


そんな風に思えたのだ。
 

ふみはあの頃、ただの子供だった。


明かしてしまえば簡単で、ふみは腹に子がいた。


初潮も始まったばかりで、ほんの一度だけの戯れで出来たのだと言っていた。


相手が誰なのかを黙ったままのふみはそんな歳でもう女だったのだ。


僕がのんきに木登りなんてかして近所の子供と遊んでいた頃だ。