ここで引き下がるワケにはいかない。
今の私には『私を信じて待っててくれる人』がいるから・・・。
私の言葉に後押しされたのか、女はゆっくりと立ち上がる。
「あなたの父親のことは・・・本当に愛していたわ。彼が裕福な家を捨ててまで、私と子どもを選んでくれたことも本当に感謝していた。この人と子どものために、私も何が何でもがんばろう・・・そう思ってた・・・。けど・・・・。」
女が自分の両手を握り締める。
私の体にも緊張が走る。
「私はそんなに強くはなかった・・・。」
「・・・・・?」
女の言葉の意味を考えて首を傾ける私。
「彼が家を捨てたことで、状況が一変したの。会社を一から興して・・・家にもあんまり帰らなくなって・・・生活は貧しいし・・・1人で・・不安で堪らないのに・・・それでもあなたは容赦なく泣き続けるし・・・・。」
幼児なんだから当たり前じゃん・・・。
それで・・・・何?。
女の言葉の先を思うと何だか逃げ出したくなる。
さっきこの女が口走ったことが真実なら・・・・。

