「魔女と家の間で板挟み状態になった青年は苦悩する。魔法をかけられていた彼は彼女を愛していたし、家族も裏切れなかった。」
少し俯く私。
その姿にテルの顔にも不安がよぎる。
「でもある事実が彼の人生を強制的に決めることになる。」
再び顔を上げ、テルの目をジッと見つめる。
「魔女は青年の子を妊娠していたの・・・。」
「・・・それがおまえってことか・・・。」
「・・・なんのこと?」
テルの質問に笑って誤魔化す私。
「その後、親父さんは家を出て会社を興した。妻と子どもを守るために。」
「・・・・・。」
テルの言葉に私の表情は険しくなる。
その変化にテルは敏感に気づく。
「・・・鳥籠の中の世界しか知らなかった青年が、一から社会で生きていくのはさぞ厳しかっただろうな。家にいる時間が減り、気づいた時には・・・・。」
「魔女は家にはいなかった。」
話の主導権を握りかけていたテルの言葉を私は遮った。
『親父さん』から『青年』に言い換えたのはテルの優しさだと思う。
でも・・テルの口からこれ以上この話は聞きたくない。
『あの女』のことだけは・・・。

