「昔々あるところに、裕福な家庭に育った1人の青年がいましたっ。」
高鳴り出した鼓動を誤魔化すように、突然叫び出した私。
「・・・は?なんだよ、いきなり。」
疑いの目を向けるテル。
当たり前か・・・。
今の私、めっちゃ不審者・・・。
「いいからっ!よくあるイギリスあたりの話だよっ。」
「・・・ますます意味分かんねぇんだけど?」
「鳥籠の中で何不自由なく育った青年が、このまま決められた婚約者と結婚して、家を継ぐのは当たり前だと思われていた。彼の親も彼自身でさえもそう思ってたの・・・。」
テルの疑問を完璧無視して勝手に話を続ける私。
テルは『ハァ~』っと1つ大きなため息をつくと、諦めたかのように静かに私の顔の前に腰を降ろした。
静かな部屋で、ギシっとベッドが軋む。
私はその音に反応して、思わずムクっと起き上がる。
近づいたテルとの距離。
ドキドキが加速する・・・。

