「ちゃんと話しておかなかったのが悪かったんだよな・・・。」


「え?」


親父さんの突然の言葉にオレは思考を止めた。


「話すって何を?」


オレの問いに親父さんは微笑み返した。


何だか力のない微笑みにオレの心はザワつき始める。


「たぶん・・美優はテルくんのこともテルくんのお母さんのことも嫌いじゃないよ。」


「・・・・。」



どうでもいいが・・親父さんは籍を入れてないことを負い目に感じているのか、オレたちに気遣ってんのか、オレと美優の前では母さんのことを『テルくんのお母さん』と言う。



「テルくんに関しては・・嫌いどころか気に入ってるんじゃないかな?正直、君と一緒にいる美優を見てると不思議な気持ちになるんだよ。あの子も子どもだったんだなぁって。」


「・・・・?」


「ハハっ。情けない話、私といる時のあの子はしっかりしすぎててね・・・。テルくんといる時の美優は見てて面白いくらい、表情がクルクル変わるから・・・少し幼すぎるくらい。でも、それが普通の学生なんだよな・・・。」


悲しそうな目で美優が出て行ったリビングのドアを見つめる親父さん。


そんな親父さんの腕に母さんが静かに触れる。


その温かさに気づくと親父さんは優しく母さんに微笑みかけ、1回・・・大きく頷いた。


親父さんの中で何かが決まった・・・。


オレでも分かった瞬間だった・・・。