「先生っ……」



だけどその瞬間彼女が待ってと言わんばかりにスーツの袖を掴んだ。



「それでも私っ……」



彼女がぽろぽろと涙を流しながら顔を上げる。


淡い照明の中、潤んだ瞳を必死になって突きつけてくる。



「先生が好きなんです!」



勢いよく立ちあがり、後ろから俺の背中にしがみ付く。



「ミサちゃ…」


「好きなんです!どうしても先生が好きなんです!こんなんじゃ納得できないっ!」



言いながら、彼女の手がギュッとスーツを握りしめる。


俺は立ち止まり、そんな彼女にはぁ…と息を吐いて



「悪いけど……」


「だって、お父様はいいって言ってくださいました!」


「……えっ?」


「だって言ってくださったんですもん!私なら申し分ないって、ぜひ、家に来てほしいって!」