きっちり5分後、ネコ専務は目で確認でき
る距離に姿をあらわした。
姪は手を振り、叔父はそれを見て少し急ぎ
足になる。

あと5メートル、というあたりになり、
叔父さん、遅いっ!とネコガールが言い
かけた時、ネコ専務のケータイがプルプル
と震動し、ネコ専務ははい、と電話に出た。

すぐにその表情が変わる。
はい、はい、何ですって?分かりました、
ええ、もちろんです、行きます、など、
何やら真剣そうな声で話をしていたネコ
専務は、心配そうに見ていたネコガールの
前でパタンとケータイを折ると、

すまん、急用だ、会社の製品が事故を起こ
したんだ、謝罪会見を開くことになりそう
だな、すぐ行かなきゃならない、すまん、
また今度、と早口で一方的に言ったかと
思うと、ピューッと飯田橋駅の方に行って
しまった。


そういうわけで、今回、ネコ専務とたまは
会うことができなかった。
ネコガールはとても残念に思ったが、都は、

「ホントだ、ちょっと似てたよ。
 あたしはこれでいいや」

と満足し、まあまあ、いつでも会わせられ
るよ、と友人を慰めたのであった。

             おしまい