昇降口を出て真っ直ぐ校門に向かって歩いていると、あたしは数メートル先を歩く人物に気がついた。
学校指定カバンを脇の間に挟んでゆっくりとした足取りで歩く一哉先輩。
先輩の横を追い越した女子生徒がキャッキャと友達同士で盛り上がっている。
一哉先輩とあたし達の距離はグングン縮まっていく。
距離が縮まるたびに、何故か鼓動が速まって。
心臓がドクンドクンと不快な音を立てる。
一哉先輩に大知と一緒に帰るところを見られたくないのか、大知に一哉先輩と知り合いだと思われたくないのか。
どっちなのか、自分でもよく分からない。
もどかしい気持ちを抱えながら先輩の横を通り過ぎようとした瞬間、先輩があたしの存在に気付いた。
「あ、真依子ちゃん。今帰り?」
一哉先輩の視線は、あたしを通り越して横にいた大知に注がれる。



