「ねぇ、大知。サッカー部に入らなかったって……本当?」
廊下を歩きながらそう聞くと、大知は苦笑しながら髪をクシャクシャといじった。
「なんだ、もう知ってたのか」
「どうして入らなかったの?大知、あんなにサッカーが好きだったでしょ?」
「サッカーやってる場合じゃなくなっただけ」
大知はそう言うと、目を伏せる。
サッカーの名門校だからという理由で桜丘高校に入学した大知。
スポーツ推薦枠で入学した大知がサッカー部に入らないなんて。
「将来はサッカー選手になる」
そんな野望を抱いていた大知が何故サッカー部に入らなかったのか。
その理由を興味本位であれこれ聞くことはできず、あたしは口を結んだ。



