「なに?何の話?てか、大知って誰??」
すると、隣で聞き耳を立てていたケンちゃんは興味津々といった様子でりっちゃんを見た。
「大知?真依子の元カレだけど」
「つーか、元カレこの学校にいんの?俺、ちょっと見てみたいんだけど」
「ケンちゃん、そういうの悪趣味だって!」
「でも気になる。なぁ、一哉?」
「……別に」
ケンちゃんから顔を背けている一哉先輩。
その表情はあたしのいる位置からは分からない。
ただ、先輩の声はいつもよりずっと低くあたしの耳に届いた。
「俺、先に教室戻るから」
「は?ちょっ……何で急に……」
「次、数学だろ?俺当てられるし」
制服に付いた汚れをパンパンと手で払い落すと、先輩は振りかえることなく屋上から出て行った。



