小さな恋【完結】

「大知……急に、どうしたの?」


ダラりとだらしなく垂らしている腕。


大知の背中に回すことも、Yシャツの裾を掴むこともできない。


あたしがするべきことは、大知の胸を力強く押すこと。


大知には繭ちゃんっていう彼女がいるんだから。



「大知、苦しいよ……。離して?」


両手を大知の胸に当てて押し返す。


だけど、大知はそれを拒むようにあたしの体を強く抱きしめた。


「嫌だ」


「大知……お願いだから」


思わず口から零れそうになる大知への想い。


「好き」と伝えたい。


だけど、絶対に伝えちゃいけない。


「お願いだから離して……――」


ギュッと目を瞑った瞬間。