小さな恋【完結】

「ちょっと、一哉……。彼女がビックリしてるでしょ?」


女の人は「邪魔してごめんなさい」と言って謝ると、一哉に微笑みかけた。


「……一哉、幸せになってね?」


潤んだ瞳を一哉に向けた女の人。


一哉は何も言わず、ただ口を固く結んだままあたしの腕を引っ張った。



「いこう」


自分の中に生まれた違和感。


掴まれている腕が痛みでジンジンと痺れる。


「一哉……!!ちょっと、待って!!」


女の人にペコリと頭を下げるのが精一杯で。


一哉はあたしの腕を掴んだまま、歩き続ける。


その背中は、どこか頼りなくて余裕がない。


祭り会場から少し離れた公園に着くと、一哉はようやくあたしの腕を離した。