小さな恋【完結】


「か……ずや?」


違う。手が解けたんじゃない……。


わざと解いたんだ。


そう気付いた時には、すぐ目の前に小柄な女の人が立っていた。


「……一哉、だよね?」


紺色の浴衣を着たとても綺麗な女の人。


「久しぶりだね。元気だった?」


「……あぁ」


女の人の笑顔に一哉は余裕なく、頷く。


二人の間に流れた特別な空気。


少しだけ遠慮がちで、それでいて親密そうな……そんな空気。


「初めまして」


そして、女の人は一哉の横に立っていたあたしに小さく頭を下げた。