話をしたあの日から


橘さんは声を掛けて来なくなった




でもやっぱり
飴玉男がクラスを訪れると


痛い程の視線を感じていた





『諦めない』


そう言った橘さんの眼差しが焼き付く






その日から徐々に



少しずつあたしの周りで
不思議な出来事が増えていった





「ない。」


「何が?」


「辞書。ここに入れて置いたんだけどな…」



廊下に置いてある小さな個々のロッカー



次の英語の授業に必要な物を取りに行ったあたしは


置いてあるはずの辞書がない事に気がついた



「机の中あるんじゃないの?」


「机には何も入れないもん。」



体操着やら
教科書やらを引っ掻き出して探してみるが



やっぱりない