あたしは彼を見て考えた 袋を勢いよく開けた拍子に 飴玉が飛び出して落としてしまった そんなところだろう 誰にでもある経験 だけどあまりに悲しそうで 呆然とする彼にあたしは思わず吹き出しそうになった 「はい、あげる。」 「え………?」 あたしは制服のポケットにしまったままの飴を彼に差し出した 「あげるよ。」 一部始終見てましたと言わんばかりに 彼の手のひらに飴を置いた その時 降りるバス停のアナウンスが流れて立ち上がったあたしは 「それもイチゴ味。」 そう言ってバスを降りた