「俺はドレスなんていらない」


出た言葉はぶっきらぼうだった。



「お言葉をお慎みください」



リリアがクリスをたしなめ、カミラから受け取ったカップを渡す。



受け取ったクリスはカップの中身と匂いに更に嫌な表情になった。



「その薬湯だけは鼻をつままないと飲めなかったわ」



同情するとばかりの表情を浮かべる沙羅だ。



「全部飲んでください ガラム様の申し付けです」



クリスは一気にカップの中身の薬湯を飲み干した。



何とも言えない味が口の中に広がる。



「こちらをどうぞ」



リリアが差し出したのは、はちみつを湯に溶かしたはちみつ湯だった。



クリスは少し冷めたはちみつ湯をごくごくと飲み干した。



いつになったらこの薬湯を飲まなくて済むようになるのか……。



まだ薬湯の味が口に残っている感じがする。



クリスは顔をしかめた。



その時、目の前に掌を上に向けて差し出された。



「はい これを舐めて」



掌には赤い丸いビー玉のようなものが乗っている。



「?」



クリスにとってそれは初めて見るものだった。



「……ガラス玉?」



「うふふ、違うの これはアメと言って舐めると自然と溶けていく甘いお菓子なの」




薬湯の味に辟易した経験を持っている沙羅は王室の料理長に言って作ってもらったのだ。



子供たちが病気で薬湯を口にする時も、これさえあればすんなり飲んでくれる。



クリスは赤いアメを受け取って口の中に入れた。