眠りから覚めたクリスが、目にしたのは紫色の瞳に漆黒の長い髪の女性だった。



寝台のそばでイスに座りじっと自分を見ていた。



「……だれ?」



眉間にしわを寄せて起き上がるとまっすぐ青い瞳で見つめた。



「この方はサラ王妃です」



すぐ傍に居たリリアが言う。



サラ王妃の名前を口にした時、愛おしげ、尊敬、忠誠……そんな風に聞こえた。



「おう……妃……」



クリスは目をぱちくりさせた。



――この少女みたいな女性が王妃……。



黒髪を見るのは生まれて初めてだ。


見事に艶のある美しいまっすぐな髪。



「ルーファスが言っていた通り、とても可愛いわ~ あたしは沙羅です よろしくね リリア、ドレスを選ぶのが楽しみね この際だからたくさん作ってしまいましょう」



王妃に屈託ない笑顔を向けられてクリスは笑うとも、顔をしかめるとも……とても複雑な表情になった。



そこでクリスは思い直したようにリリアを見た。



「何を言っているんですか?」



眉間に寄せられた皺が深くなる。


――ドレスだって?



「明日、裁縫師が来るからね あぁ 体調は大丈夫かしら?リリア」



「手早くするように申し付けましょう」


そこへ侍女のカミラが薬湯の入ったカップを持ってきた。