「見事な髪だったな」


ルーファスが思い出したように言う。


「ええ 珍しいですよね この国の者ではないのでしょう」


彼女は家ではなく宿屋にいた。


旅人のようだと女主人も言っていた。



「なんだか気になるな ロイドに調べさせよう 名はなんと言う?」


「それが……俺も知らないんですよ」


「では目が覚めるまで待つしかないな」


あの娘、素直に名前を言うだろうか?


キースは肩をすくめた。



§ § § § § §


治療をしているとクリスの目蓋がゆっくり開いた。


ガラムを見ると、青い瞳が視線を変えた。


「高熱があるのに無茶ですよ?」


「……」


「この方は国王陛下の従兄弟です 失礼は許しません」


だんまりを決め込んだクリスにイレーヌが厳しく言う。


「まあまあ、イレーヌ殿 この方は大変な目にあったのです そのような事は後ほどでもかまわないではありませんか 陛下とキースが待っておられます 呼んで来て下さい」


イレーヌは2人を呼びに隣の部屋へ向かった。