気づかないかもしれないし、もうっ!どうにでもなれっ!


そう思ったのに……




「……まあ……」



すぐにリリアは俺の胸の膨らみにつけられた口付けの跡に驚いた。



俺はリリアの顔から視線を外し壁に向いた。



「いったい……どうしたのですか?」



ドレスを仕立てる為に身体のサイズを測った時は付いていなかった。



クリスは何も言わない。



「クリス様……?」



ふと首筋に目が行くとやはり同じような口付けの後。



「なんでもない!」



クリスの顔を見ると、今にも泣きだしそうに見えた。



「誰が……?」



「ほっといてくれっ!」



強い口調で言うと真紅のドレスを鷲掴みにして着始める。



いったい誰がこんなことを?最後まで……?そういえば、カミラが今朝来た時に床の上で眠っていたと言っていた。



寝込みを襲われたのでしょうか……?でも、クリス様なら暴れるはず、部屋もめちゃくちゃになっているに違いない。



部屋は昨日のままきれいだった。



ふと、昨日帰ってきたキースが頭に浮かんだ。



リリアは大きくかぶりを振ると、クリスのドレスを手にした。