そのため男は全国を飛び回っては

あちこちのコンビニや駅のATMから

多額の現金を少しずつ引き出していった。


「今回はさすがにしんどかったな…福岡、秋田、新潟…」

「ご苦労様…これで、ちょうど半年分ね。」

女は紙袋に入った札束を自分の横に置いた。

今日は、男が女に半年分のマンションの賃料を渡す

約束の日だ。

「待たせてしまって、すまない。」

「いいのよ。あんたなら絶対成功するって信じてたし。」

不敵な笑みをこぼす二人。


男は、詐欺によって手に入れた現金で、

女に肩代わりしてもらっているマンションの賃料を払っていた。

ここ最近は被害の拡大を受けて誰もが警戒し、

なかなか思うような成果が上げられなかったが、

1週間前に目をつけたターゲットはなぜかことごとく男の話術に嵌り、

瞬く間に大金が転がり込んだ。