そんなおじいさんを見てモモは悲しくなり、涙を流しながらおじいさんの頬っぺたをペロペロと舐めてあげました。

「モモや、ありがとうよ。おじいさんはそろそろおばあさんのところへ行かなければならないんだ。モモを一人残して行くのは悲しいけれど、いつでも元気に暮らすんだよ。
けんちゃんのお母さんにはモモの事を頼んでおいたから心配いらないよ。
モモと一緒に暮らした月日はとても楽しかったな。
おじいさんは先にあの世へ行ってるからね。
雲の上からいつもモモを見守っているよ。
モモ、本当にありがとう・・・」

そう言っておじいさんは瞼を閉じ、静かに息を引き取りました。

それからモモはいつでもいつでもおじいさんの側を離れようとはしませんでした。



やがて季節は巡り、温かい春がやって来ました。

おじいさんの家の桜の樹には、今年も美しい薄紅色した華麗な花びらが咲き乱れていました。

そして、時々吹いて来る温かい春の風に、花びらがふわりふわりと舞い散っていました。


(おしまい)