妙な沈黙が流れる。
「穂香のこと幸せにしろよ」
“俺の分もな”
そう言って、切なそうに笑った。
「……言われなくても、そうするつもりだ」
口ではそんな強気なこと言っていても、爽の悲しそうな顔に柄にもなく胸が締めつけられた。
「もし穂香を傷つけるようなことしたら、殺す」
そう吐き捨てて、爽は俺の横を通り過ぎていった。
やっぱりお前は、昔と全然変わってない。
バカで不器用。
だけど本当は温かくて、どこまでも真っ直ぐなヤツだ。
去っていく爽の背中を見つめながら、俺はクスッと笑った。
――バタンッ
家に帰ってきた俺は、すぐさまキッチンに向かって、買ってきた食材をレジ袋から取り出す。
コートとマフラーを脱いでエプロンをつけて、鍋に火をかけた時、アイツの存在を忘れていたことに気がついた。
急いで玄関へと向かう。
デッカい袋が、転がっていた。


