結局、クリスマスの買い物に全財産を注ぎ込んでしまった……。
来年からバイトでもするか。
そんな呑気なことを考えていると、もう家の近くまで帰ってきた。
右手に食材、左手にしろくまを持ちながら、ひたすら歩く。
住宅街へと続く十字路を曲がると、ある人物に目が止まった。
寒そうにポケットに手を入れて、白い息を吐きながら足早に歩いている。
ソイツは俺に気がつくと「あ」と声を上げた。
「……よぉ」
黒いコートに身を包んだ爽はすれ違いざまに静かにそう言った。
「てか、お前。なんだよその荷物」
俺が手に持っている荷物を覗き込む。
「……ん? あぁ、これ。クリスマスの」
俺がそう応えると爽は、「ぷっ……」と吹き出した。
「楓がクリスマスって柄じゃねぇな」
「うっせぇ…」
俺は照れ隠しで思わず後頭部を掻く。
「……なぁ、楓」
目を細めて笑っていた爽がいきなり真剣な顔をして、俺を見つめた。


