「あれ、王子じゃない?」


「えっ! どこどこ!?」


乳製品売り場を見ていると、背後からそんな声が聞こえてきた。



……面倒くせぇ。


きっと今、後ろにいるのは俺の学校の女だ。


キャーキャーと、騒ぐ声が嫌でも耳に入る。


「あのぉ……」


そのまま知らん振りしていると、1人の女が控えめに声をかけてきた。


俺は黙って、後ろを振り返る。


そこにいたのは、同じ学年の女だった。


「あっー! やっぱり楓王子だぁ! こんなところでなにしてるんですかぁ?」


白いコートを来た女が、語尾を伸ばして馴れ馴れしく俺に話しかけてくる。


「買い物」


俺は素っ気なく言い放って、また乳製品売り場に目をやった。


「いやぁん! 冷たい王子も素敵ぃ!」



……この女はバカか。


なにが“素敵ぃ”だ。


早くここから立ち去れ。



「楓王子ぃ!あたし達、暇なんですぅ。これから一緒に遊びません?」


すると、さっきとは違うもう1人の女が俺の顔を覗き込んだ。