「え……?」



「朝までずっと、そばにいるから」



「橘くん……」



「おやすみ」



咲下を見つめて言った。



「ごめんね……ありがと……」



咲下の瞳に涙が浮かぶ。



「ひとりじゃないよ」



「橘くん……」



「ちゃんとここにいるから」



そう俺が言うと咲下は微笑んだ。咲下の頬を涙が伝ってく。



「うん……すごく安心する……」



手を繋いだまま、壁にもたれたふたりは体を寄せ合い、



1枚のブランケットに包まった。



彼女の寝息だけが聞こえる静かな夜だった。



逃れられない現実。



どうしようもない悲しみ。



苦しみを抱えて。



いままでどれだけ、ひとりでつらい夜を越えてきたんだろう。



「……っ」



咲下は、俺の肩にもたれて、眠ってる間も涙を流していた。



起こさないように、そっと頬に手を伸ばして親指で咲下の涙を拭った。



咲下は……もう十分がんばってるよ。



強がらなくていいんだよ。



俺の前では、無理しないで。



ひとりで泣かないで――。



彼女の頭にそっとキスをした瞬間、俺の頬に涙が伝ってく。



つらい気持ち、悲しみ、傷もすべて……。



俺が心ごと、代わってあげられたらいいのに。