遅刻ギリギリの時間までバス停の近くで待っていたけど、結局、咲下には会えなかった。
学校に着いて、教室を見回してみても咲下の姿はない。
「橘、おはー」
クラスメートのくぼっちが俺の元にやってくる。
「おはよ」
「どした?橘、なんかあった?」
「え?別に普通だけど」
くぼっちはニヤニヤしながら俺の顔を覗き込む。
「もしかしてデートの誘い断られた?」
「なんか……デートとか誘う雰囲気じゃないかも……」
「なんで?」
「んーなんとなく」
――キーンコーン、カーンコーン。
チャイムが鳴り、担任が教室に入ってきた。
「みんなー、席につけー。出席とるぞー」
結局、咲下が登校してきたのは、3時間目の授業が始まる前だった。



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)