逢いたい夜は、涙星に君を想うから。



病院からの帰り道、バスに乗ってすぐに雨が強くなり始めた。



つり革につかまって立ち、バスの窓に激しくあたる雨粒を見つめる。



さっき聞いた医師の言葉が、頭の中によみがえってくる。



“お母さんの検査の結果ですが……胃にガンが見つかりました”



“ガン……ですか……?”



“胃ガンの中でも非常に悪性の高いガンで、お母さんはまだ若いので進行も早く……”



検査結果の画像を見せながら医師は病気の説明をした。でも、あたしには難しくて詳しいことはよくわからなかった。



“お母さん……治りますよね……?手術とかするんでしょうか?どのくらい入院すれば……”



“胃だけでなく、骨にもガンの転移が見られます。状態としては、ステージ4……残念ながらすでにもう……治療には効果が期待できません”



目の前が真っ暗になった。



“お母さんの病気は……もう治らないってことですか……?”



“今後は、お母さんのガンによるつらい症状を少しでも和らげるために、緩和ケアを中心に行っていきます”



お母さんが……ガン……。



病気はもう治らないの?



手遅れだってこと……?



そんな……。



あたしの……あたしのせいだ……。



いままで、お母さんが具合悪いのを知ってたのに、何度も見て見ぬフリしてきた。



きっとまた、精神的な病気のせいで具合が悪いんだって、



薬を飲んでるから大丈夫だろうって、あたし、勝手に決めつけてた。



でも、それだけじゃなかったんだ。



いつからガンが……?



あたしが……いつ気づいていれば間にあったの……?



もっと早く気づいてあげられたら、お母さんの病気はきっと治ったのに。



“凜さん、大丈夫?つらいと思うけども……”



“先生……あたしのせいです……具合が悪いのを知ってたのに、ほっといたんです。精神的な病気のせいで具合が悪いんだって、勝手に決め付けてたから……”



“胃ガンはね、定期的に検査しないと見つかりにくいんだ。自覚症状が出てきた頃にはもうかなり進行していることが多いんだよ”



“でも……”



“つらいだろうけど、自分を責めてはダメだよ”