――――――……
―――……
「それじゃ……失礼します……」
担当医師から、お母さんの検査結果についての説明が終わり、あたしは診察室を出る。
――ガチャ……バタン。
少し上を向いて大きく息を吸い込むと、唇が震えていることに気がつく。
なんで……?
廊下を少し歩いて、壁に寄りかかった。
こんなの嘘だよね……?
そうだよ……嘘に決まってる。
唇の震えが止まらない。
きっと、なにかの間違いだよね……?
胸のあたりをぎゅっと掴み、
壁にもたれたまま、滑り落ちるようにしゃがみ込んだ。
こんなこと……信じたくない……。
誰か、嘘だって言ってよ。
なんで……?なんでこんなことに……?
瞳に溢れる涙をゴシゴシと腕で拭う。
「……シッカリしなきゃ」
下唇をきゅっと噛みしめる。
あたしは立ち上がり、お母さんの病室へと向かった。



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)