ペンションの中を探したけど彼の姿はなく、あたしは外に探しにいく。
辺りはまだ暗い。
橘くん……どこ……?
どこに行ったの?
あんな夢を見たから……あたし怖くて……。
不安だよ……。
近くの砂浜のほうへ走っていくと、砂の上にしゃがみこむ彼の姿を見つける。
ここにいた……よかった……。
橘くんの姿を見つけて、ホッと胸を撫で下ろす。
こんな夜中に、ここで一体何してるんだろう……?
あたしは、橘くんのほうに歩いていく。
何気なく振り返った彼が、あたしがやってきたことに気づき、立ち上がった。
「咲下?」
橘くんは、あたしのほうに慌てて走ってきた。
「えっ……ちょ、どうしてここに?」
目の前に立った橘くんの顔を見て、あたしは思わず彼に抱きついてしまう。
「ど、どした……?」
目が覚めて、隣に橘くんがいなかったから。
寂しかったよ……。
怖かった……。
彼はあたしの背中をポンポンと優しく叩いて言った。
「本当は朝になったら、ここに咲下を連れてくるつもりだったんだけどな」



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)