逢いたい夜は、涙星に君を想うから。




“ありがとう”



その言葉は、本当はあたしが言いたい。



橘くんには、何回言ったって、何百回言ったって足りないね。



微笑むあたしを見て、床の上の彼は、あたしの体を優しく抱きしめた。



彼の胸に耳をあて、目を閉じる。



“好き”



あたしは心の中で呟いた。



こんなにも胸が苦しくて、涙が出るくらい……好き。



ちゃんと言いたい。



あたしの声で、伝えたいのに……。



あたしの声は、いつになったら元通りになるの?



あとどれくらい待てばいいの?



時々、不安で眠れなくなる。



このまま一生、あたしは声を失ったままなんじゃないかって。



そう思ってしまう日もある。



あたしは、彼の服をぎゅっと強く掴んだ。



彼の服が、あたしの涙で濡れてゆく。



「咲下……?」



あたしは顔を上げて、涙ながらに微笑んだ。



彼はあたしの心の声に答えるかのように、



「大丈夫」



そう優しい声で言った。



「泣きたいときは、泣いていいんだよ」



そう言って今度は、あたしをぎゅっと強く抱き締めてくれた。






“泣いていいんだよ”



前にも、そう言ってくれたことがあったね。



無理をしなくてもいい、そのままのあたしでいてもいいんだって。



そう思える場所を作ってくれた人だった。