「あ、ごめん。昼寝してた?」
あたしは起き上がってベッドの上に座り直し、首を横に振る。
「やっと完成したよ。木のテーブル」
あたしが笑顔を見せると、橘くんは疲れたのか、床の上に大の字になった。
あたしはベッドから降りて床に座り、橘くんの顔を上から覗き込む。
彼はあたしの顔をじっと見つめた。
「……不思議だな」
彼の言葉に、あたしは首を傾げる。
「咲下の顔見ると、疲れとか全部吹っ飛ぶ」
そう言って彼は、あたしに優しい笑顔を見せた。
「咲下」
あたしを呼ぶ彼の声は、いつだって優しい。
手を伸ばした彼は、あたしの頭をそっと撫でる。
「ありがと、一緒にいてくれて」
“ありがと”
その一言だけで、泣きそうになるくらい。
うれしい言葉だった。
この世界で。
生きててよかったって。
そう心から思える、幸せの言葉。



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)