あの日、陽太の姿を見かけなければ、
あたしは自分の気持ちに正直になることも。
勇気を出して、もう一度橘くんに逢いにいくことも。
なかったかもしれない。
陽太と交わした約束が、あたしの背中を押してくれた。
向かう先は、橘くんのいる場所。
“死ぬ時は一緒だかんな”
“ふたりで一緒に生きるんだよっ”
あの日から1ヶ月。
“これからはずっと……咲下と一緒にいたい”
そう言ってくれた彼の元を去ってから。
1ヶ月が経っていた。
あの日、不安でいっぱいで。
いつ戻れるかもわからなくて。待ってて欲しいなんて言えなくて。
だから、もう二度と橘くんの元には戻れないって思ってた。
でも……最後にもう一度だけ。
自分の気持ちに素直になる。
振り返ると、あたしは、
自分から一度も、逢いにいったことはなかった。
いつも彼が、あたしを探してくれたから。
あたしを見つけてくれたから。
この世界のどこにいても。
いつも君が……助けに来てくれた。
逢いに来てくれた。
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橘くんに逢いたい……。
あのとき、その気持ちだけが、
あたしのすべてだった。
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![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)