陽太の姿を見たのは、高校の卒業式以来だった。
あの日……。
“ずっと、心の支えにしとったやつがおるやろ?いまも変わらず……”
“そいつの前やったら……凜は無理せんで、おれるんやろ?”
卒業式の日、陽太があたしに言った最後の言葉は……。
“約束……守るんやぞ?”
約束……。
あたしは、隣の車両にいる陽太に気づかれないように、くるりと後ろを向いた。
いまのあたしは、笑顔で陽太に会えない。
声が出なくなったことを知ったら、きっと心配するに決まってる。
何より、陽太との約束を、あたしは守ってなかった。
陽太との約束……。
“橘くんに逢いに行くこと”



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)