駅のホームで、おばさんにメールを打っていた。
少しの間、おばさんのところでお世話になって、ひとりで暮らせるアパートでも探そうと考えていた。
父親の残したお金で、しばらくは暮らしていけそうだったし、ちゃんと病院に行って、声が元通りになるよう治療したかった。
電車を待つ間……目を閉じると、橘くんの顔が浮かぶ。
思い出さない日は、1日もなかった。
あたしの心の中には、いまも変わらず橘くんがいた。
元気でいるよね……きっと。
あれから1ヶ月も経つ。
いまさら橘くんの元に戻ろうなんてこと、考えてもいなかった。
だけど、あのとき――。
ホームに停車した電車に乗り込み、何気なく周りを見ると、
隣の車両に偶然、陽太の姿を見つけた。



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)