父親は、嘘つきだ。
あたしを愛してたわけじゃない。
愛してたなら、簡単に捨てたりしない。
“愛する娘を『凜』と名付けた”
この写真の中のあなたは……この時はまだ……
あたしを愛してくれてた……?
大切に想ってくれてた……?
本当のこと聞きたくたって、もう答えてくれないじゃない。
ずるいよ。
最後まで、あたしを傷つけて。苦しめて……。
このまま逃げるなんて……ずるいよ……。
あたしは写真を強く握りしめた。
唇が震えて、目を閉じる。
何でいまになって、涙が出てくるんだろう。
***************
あのとき、
橘くんの言葉を思い出したの。
だからあたしは、それ以上
苦しまずに済んだ。
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“許さないっていう気持ちが、自分を余計に苦しめてる気がして”
“自分が幸せになるためには、許したほうがきっとラクなんだ”
相手を憎んで生きるよりも、
相手を許して生きたほうが、自分もラクになれる。
そう言っていた橘くんの言葉を、思い出したから……。



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)