俺の顔を見つめて、彼女は口元をゆっくりと動かした。
彼女の口の動きを見て、俺は言葉を読みとる。
“橘くんに何かしちゃったかなって”
少し哀しげな表情の彼女に、俺は首を横に振った。
「ちがうよ。咲下は悪くないから。俺が……ガキでした」
彼女は俺の瞳を真っ直ぐ見つめる。
「不安にさせて、ごめん」
見つめ合ったまま、俺は右手で彼女の頬を包み込むように、そっと触れた。
「咲下……」
俺はゆっくりと彼女に顔を近づける。
「好きだよ」
そう囁くように言った俺は、目を閉じて、
彼女にキスをした――。
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