「冷たい態度とって、ごめんな」
俺に抱きしめられたまま、彼女は首を小さく横に振る。
勝手にモヤモヤして……。
くぼっちの言うとおり、ヤキモチやいたんだ。
咲下のことを信じてるから、ヤキモチなんてやかない……
そう、くぼっちには強がって言ってみたものの、
本当は自信がないからヤキモチをやいたんだと思う。
お互いの想いが通じ合って、いまこうして一緒に暮らしている。
それでもきっと。
俺のほうが、咲下のこと好きだから……。
そんなことを思ってる俺は、なんてバカなんだろう。
咲下がそばにいるだけで幸せなのに。
咲下を幸せにしたいのに。
咲下の笑顔が見たいのに。
くだらないことでヤキモチやいて、冷たい態度とってる暇があるなら、
俺が愛せばいい。
いっぱい愛せばいいだけじゃんか。
他の誰にも渡さない。
咲下を想う気持ちは、絶対に誰にも負けないから――。
「……咲下、こっち向いて?」
俺が腕の力を緩めて彼女の体を離すと、咲下は体ごと俺のほうに向き直る。



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)