「わかってるよ……橘。おまえもな」
そう言ってくぼっちは、向こうを指差す。
くぼっちが指差したほうに目を向けると、くぼっちの友達のひとりが咲下と向かい合って砂浜に座っていた。
砂の上にふたりで何かを書いて遊んでる……?
何やってんだろ。ずいぶん楽しそうな雰囲気だけど……。
「あれれ~?なんかいい雰囲気~?」
そう言ってくぼっちは、ニヤニヤした顔で俺のことを見た。
「アイツいま彼女いないし、咲下のこと狙ってたりして~?」
その言葉に、俺は思いっきりくぼっちを睨みつけた。
「……って、そんな睨まなくたっていいじゃん。冗談だよ、冗談っ」
「……黙れ」
「アハハハッ」
くぼっちは砂の上で笑い転げている。
「なに笑ってんだよ?」
「だっておまえカワイイんだもん。高校のときと全然変わってねぇ」
俺は砂をつかんで、くぼっちの膝に投げた。
「ヤキモチやいてる~」
「は?別にやいてねぇーし」
ちょっと……いや、ほんの少しだけ胸の中がモヤッとしただけだ。
「俺に八つ当たりすんなよなぁ」
「どこが八つ当たりだよ?普段と変わんねぇし」
「あーあ、強がっちゃって~。イライラしてんだろ?それ、ヤキモチだから」
完全に俺を面白がってるな、くぼっちのやつ。
「咲下んとこ、行かなくていいの?……ぶっ」
「笑うな」
別にヤキモチなんか……。
「咲下のこと信じてるから俺は」
「だからなんだよ?相手のこと信じてても、彼女が他の男と仲良くしてたらヤキモチやくのが普通だろ」
「だからぁ、俺はヤキモチなんか……」
「あーわかっちゃった。さては、咲下に重たいって思われたくないんだろ?少女マンガの主人公みたいだな、おまえ」
「もぉ何とでも言え」
「それだけ好きってことじゃん。ヤキモチやいてるって知ったら咲下もうれしいんじゃないの?ぶぶっ」
だから笑うなって。
ニヤニヤすんなって。ムカつくな。



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)