「くぼっちは?まだ彼女と仲直りしてないの?」
くぼっちは高校の時から付き合ってる彼女と、つい最近ケンカをしてしまったらしい。
「仲直りはしてない。俺らはね、橘と咲下みたいなほのぼのカップルじゃないの」
「高校のときは、ほのぼのカップルに見えたけど?」
「だって彼女最近さぁ、何か気に入らないとすぐ“もういい”とか“もう別れる”って言い出すんだもん」
「どーせ、くぼっちが彼女を怒らせるようなこと何かしたんだろ?」
「すぐそういうこと言うよね~。おまえだけは俺の味方してくれよぉ」
「ごめん、ごめん」
俺はくぼっちの背中を優しく叩いた。
「俺、大学生じゃん?彼女、専門学生じゃん?お互いバイトとかもあるし、高校のときみたいにはいかないんだよ」
「それはわかるけどさ……言い訳するなんて、くぼっちらしくないじゃん」
「まぁ、時々俺も弱気になるときくらいあるんだよ」
そう言ってくぼっちは、砂を手でつかみ、それを指の隙間から少しずつこぼしていく。
そのこぼれ落ちていくサラサラの砂を見つめて
なんだか切ない気持ちになった。
「くぼっち……」
大切なものほど
この手から簡単に、こぼれ落ちていく。
「……彼女のこと好きなら、離すなよ?」



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)